プロスポーツメンタルコーチの増田良子です。隔月で「親」についてのコンテンツを配信させていただいています。
今回は「親の失敗談を語ろう」についてです。失敗談を伝えることのメリットなどをお伝えできたらと思います。
■親の武勇伝
「昔お父さんはこんなにすごかった」とか「お母さんはあれもこれも出来た」とか、子どもが「すごーい!!!」って思うような話をする機会ってありませんか?子どもにとって「親のすごい話」は、誇らしいことでもあり、自分のことのように自慢したくなる子もいるかもしれません。
私の知り合いに、小学生の時に自分がどれだけ足が速かったかを、小学生の息子に得意げに話した人がいます。しかもちょっと盛って(笑)
運動会で顔を合わせた息子の友達のお母さんに「○○さんってすごい足が速いんですって!?」と声をかけられ、逆に顔から火が出る程、恥ずかしい想いをしたことがあったそうです。なぜならば、本当はそこまで速くなくて、あくまでも息子の前でカッコつけて、ちょっと盛った話でしたから(笑)
子どもに悪気はありません、聞いた話が嬉しくて友達にも自慢したくなっただけです。親は、自分が子どもに話したことを、子どもが誰かに話すことくらいは想定しておきましょう。
■親の過去との比較
親の武勇伝は、子どもにとっても「お父さんってすごい!」「やっぱりうちのお母さんは昔からなんでもできたんだ!」など、自分の親を誇りに思うきっかけにもなりますが、時に逆の影響を与えることもあります。
例①
子どもが成績表を持って帰ってきた日、あまり成績が良くなくて少しだけガッカリしていました。そしてその夜、成績を見た父親が、「お父さんはいつも成績が良かったんだぞー!算数なんていつも100点だ!」と、過去の成績について胸を張りました。
その時の子どもの気持ちはどうでしょう。おそらく、自分の今回の成績を見て、「俺はもっとすごかったぞ」と比較されたように感じてしまうと思うのです。比較するつもりがなかったとしても、「比較された」と子どもが感じてしまったら、それは比較したということになります。
例②
マラソン大会で一生懸命走って、10位を取ってきた子どもに、「お父さんも毎年3位以内に入ってたからな」と過去の栄光を口にした瞬間の子どもの気持ちはどうでしょう。その子にとってピカピカ輝く10位という結果が、親の過去の栄光と比較されるという、親のマウントによって一気に霞んでしまい、喜びが半減してしまうこともあります。実際に、この子にとってこの出来事は、次からは、3位以内に入らないと認めてもらえないという気持ちを抱くきっかけになってしまいました。
親はただ、過去の自分を懐かしんで言っただけかもしれませんが、子どもにとっては負の思い込みを作り出すきっかけになることもあります。嬉しかった自分の話を聞いて欲しかったのに、親の話にすり替えられた上に、自分より上位の結果を被せられ、自尊心を傷つけられることにもなりかねません。
親子であっても別の人間です。お父さんの成績が良かったら子どもの成績が必ずいいということもないし、お母さんが美人だから子どもも100%美人なんてことはありません。将来なりたいものも違うかもしれないし、持って生まれた性格も個性も違います。もちろん、時代が変われば取り巻く環境も違います。ですから、過去の親の姿と今の子どもの姿を比較することには、なんの意味もないのです。
ですが実際はこれをやってしまっている人が大変多いと感じています。何回かこういうことが続くと、子どもは親の武勇伝に嫌気がさしてきます。「あーまた昔の親と比べられるんだ」と思うと、話も聞きたくなくなりますよね。
もし、やってしまっているなーと感じた人は、今がチャンスです。過去への執着を捨てて、今の自分とこれから先の自分について考えてみてくださいね。子どもたちは未来に向かって「今」を生きています。
■親の失敗談を語ろう
ここで、今回の本題「親の失敗談を語ろう」です。子どもたちは失敗談が大好きです。うまくいった話を聞く時より、失敗した話を聞く時の方がキラキラした目で聞いてくれますよ。
① 失敗談を語った方がいい理由
子どもにとって親は、何でもできる1番身近な大人です。そんなすごい人が、失敗した話を聞いたら「失敗しても大丈夫なんだ」と安心するでしょう。「お母さんにも苦手なことがあったんだ」とわかれば、苦手なことがある自分のことを受け入れることも可能になるでしょう。
また、親が自分の失敗や、恥ずかしい過去を自己開示することにより、親の話に耳を傾けてくれるようになります。子ども自身も失敗や恥ずかしかったことを、親に伝えやすくなり、コミュニケーションが円滑になります。
さらに、「自分も失敗していいんだ」と思えるきっかけにもなります。失敗が怖くない子になれれば、どんなことにも挑戦できるようになります。
② 成長過程に合わせる
子どもの成長過程に合わせた話をしましょう。その年齢でイメージが出来る話であれば、子どもでもしっかり頭の中でそのイメージを描くことが出来ます。イメージできるということは、擬似体験にも繋がるということになります。
そしてこれは、小さい時だけでなく、大きくなってからも、続けて欲しいコミュニケーションのひとつです。ですが、失敗談ばかり話してたら子どもに心配されますので、気を付けてくださいね。(笑)
③ 失敗談を語れない人へ
失敗談を語ることに抵抗を感じる人もいるかもしれません。恥ずかしがり屋なのかもしれないし、プライドが高い方なのかもしれないし、もしかしたら親が失敗なんてしたらいけないって完璧主義なのかもしれません。いずれにしても、親であるあなた自身が、「失敗は悪いこと」「失敗したらいけない」という思い込みを持っている可能性が高いです。子どもが失敗しないようにどんどん先回りして、失敗を予防をしてませんか?小さい失敗を経験していない子どもは、いざ大きな失敗を目の前にした時に乗り越え方がわからないという状態になってしまいます。
あるいは、過去の失敗について、自分の中で昇華出来ていない可能性があります。笑って子どもに話してみてください。考えていたよりも、今となれば笑い話って思えるものです。失敗談を子どもに話すことが、親であるあなた自身の負の記憶を乗り越えるきっかけにもなるかもしれませんね。
さて、今回は「親の失敗談を語ろう」について書かせていただきました。さっそく、夕飯の時にでも、ちょっとした失敗談を話してみてください。
増田良子(ますだりょうこ)
一般社団法人スポーツメンタルコーチ協会公認プロスポーツメンタルコーチ。
主に、アスリートの子どもを持つ保護者や、子育てに奮闘中のお母さんへのコーチングを行っています。「ママの心を軽くするランチ会」を月に1度開催。オンラインサロンspaceでもママ友会を開催しています。