こんにちは。スポーツファーマシスト・アスリードフードマイスターの曽根ゆかりです。spaceで毎月メンタルと食事についてコンテンツを配信させていただいています。今月もよろしくお願いします。
【メンタルフード】
人の心と体は密に繋がっています。「病は気から」と言われているように心の状態が体の病気を引き起こすこともあれば、体の病気が心の病を引き起こすこともあります。体は食事によって整えることが出来ます。私たちの体は毎日の食事によって作られているからです。体を整えて皆さんの日々の積み重ねを後押ししてくれるような食べ物を「メンタルフード」として紹介しています。
11月に入ってからは、日中は暖かくても朝晩は気温が低かったり風の冷たい日が増えてきました。そろそろ食事に鍋料理やスープ類が登場する機会も増えてくるのではないでしょうか。
皆さんはどのような種類の鍋やスープが好きですか?どんな鍋やスープもおいしくするために欠かせないアイテムがあります。それはうま味をプラスしてくれる出汁(だし)です。今回、出汁のうま味成分とメンタルの関係についてお話をいただき取り上げました。子供たちの食習慣作りでは登場するうま味ですがメンタルの視点は新鮮でした。同時に、食習慣は体だけでなくメンタルも含めた身体の成長と繋がっているのだと改めて認識するきっかけになりました。
今回はこれからの季節に大活躍する出汁食材でのメンタルフードです。
【出汁(だし)とうま味】
「出汁」とは、食品を煮て出した汁のことで、「煮出し汁」を略したものだそうです。肉や魚、野菜、キノコや海藻から抽出されるうま味を料理に加えるために用いられます。日本のような米食文化では、うま味の少ない野菜料理にそれをプラスするために出汁文化が発展したと言われています。
“うま味”は、甘み・酸味・塩味・苦味・うま味の基本味の中でおいしさを感じさせる重要な味です。うま味成分は、うま味を食品に与えるだけでなく風味を増加させ、食欲をかきたてる働きもあります。また、1つのうま味成分よりも異なるうま味成分を合わせることで、うま味の相乗効果を引き出します。このうま味成分の中でメンタルに関係している成分が昆布に多く含まれるグルタミン酸です。
【グルタミン酸】
グルタミン酸は、ドイツのリットハウゼン氏が小麦のたんぱく質グルテンから取り出し、グルタミン酸と名づけました。その後、日本の池田菊苗博士が昆布のうま味成分であることを発見します。グルタミン酸は、体内で合成することができる非必須アミノ酸の一種で、昆布以外にもトマトや白菜、味噌などにも含まれています。
生体内では脳内での含量が高く、神経情報伝達に関与しています。主に興奮系の神経伝達物質として働き、脳の機能を活性化させる役割から認知機能や精神疾患との関係が研究されています。一方で、脳の興奮を鎮めるリラックス成分のGABAを生成する働きやアンモニアの解毒と排出を促進する役割もあるといわれています。グルタミン酸の神経に対する働きのバランスが取れていることでメンタルは保たれます。
グルタミン酸は私たちの身体の中で作られており、身近な食品にも多く含まれるため、日本人の食生活において不足することは基本的にないといわれています。ただし、化学調味料として配合されているグルタミン酸は、グルタミン酸とナトリウムが結びついたグルタミン酸ナトリウムなので、食材から天然のグルタミン酸を摂りたいですね。
【昆布】
昆布は、海で育つ藻、海藻の仲間で光合成をして成長します。日本では約90%が北海道で、その他は三陸海岸沿いで採れ、場所によって採れる昆布の種類や用途が違います。例えば、羅臼昆布や利尻昆布は主にだし昆布として、日高昆布は佃煮やおでん用に、ガゴメ昆布はとろろ昆布や松前漬けなどに使われます。
「昆布といえば出汁」というイメージが強いかもしれないですが、近年は昆布自体の健康的要素が見直されています。うま味成分のグルタミン酸は、胃もたれを防ぐと同時に食後の満足感が得られて過食を抑えるため生活習慣病予防が期待されています。また、昆布の約3割は食物繊維で、加熱した時に出てくるネバネバした水溶性食物繊維には脂質の吸収を抑える作用があります。さらに他の成分にも、抗酸化作用、アレルギーを防ぐ免疫調整機能などが注目されています。
栄養成分としては、カリウム、カルシウムやヨウ素が多く含まれています。特に子供にとってヨウ素は成長ホルモンとともに体や知能の発育に関与している大切な栄養素です。
今回は、昆布の中でも とろろ昆布 を使ったメンタルフードを紹介します。
【メンタルミルフィーユ】
とろろ昆布は、昆布を酢につけてブロック状に固めた表面を薄く皮状に削ったもので、味噌汁に入れたり、おにぎりに巻いたり、簡単に様々な料理に使うことが出来ます。今まで紹介したメンタルフードで味噌汁やおにぎりを取り上げたので今回は違うフードにしましょう。
昆布と共にグルタミン酸を含む野菜の白菜と異なるうま味成分のイノシン酸を含む豚肉を重ねて、うま味の相乗効果も得られるメンタルミルフィーユです。今回は一人分ずつそのままお皿に盛りつけられる形にしました。
〈材料〉
とろろ昆布
白菜
豚肉(薄くスライスしてあるものが使いやすい)
※とろろ昆布と豚肉は白菜の大きさによって使用量が変わります
〈作り方〉
1.白菜を1枚ずつばらす
(白菜が大きい場合は、使用するお皿の大きさやフライパンの大きさに合わせてカットする)
2.『白菜:1枚→豚肉スライス:白菜を覆う量→とろろ昆布:豚肉を覆う量 』
の順で×3回繰り返して重ねる
3.最後に白菜を乗せる。
4.加熱する:レンジを使用する場合は、平たいお皿に乗せてレンジへ
フライパンを使用する場合は、クッキングペーパー又はアルミホイル
に包んで乗せる
(加熱することで、白菜から水分が出て蒸し焼きの状態になります)
5.火が通れば出来上がり。
(豚肉の色が、赤からグレイに変われば火が通った目安になります。)
※このままでも、とろろ昆布の塩味とうま味成分で豚肉の甘さを感じながら食べられます。
白菜の使用部位によって水分が多い場合は昆布の塩味が薄まるので、お好みでポン酢や柚子胡椒などをプラスしても美味しくいただけます。
日本では戦国時代から「昆布」と「喜ぶ(よろ『こんぶ』)」をかけて縁起物として親しまれてきました。お正月には欠かせない食材で、おせち料理にも鏡餅を飾る際にも昆布は使用されています。相撲では、場所が始まる前の土俵祭という行事で、場所の成功や安全を祈願する縁起物の1つとして昆布が土俵の中心に埋められるそうです。
昆布を食事に上手く取り入れて、メンタルも体も喜ぶ状態で過ごせるといいですね。昆布は、出汁を引くお湯の温度が高いと粘りや磯臭さが出るので、余裕がある時は水で出汁を引くと出汁がら昆布も料理に利用しやすいですよ。
メンタルフードが皆さんの積み重ねの後押しとなりますように(^^)