プロスポーツメンタルコーチの増田良子です。基本的に隔月で「親」についてのコンテンツを配信させていただいています。

    今回は「子どもの顔を見て接する」です。世の中の現状とあわせてお伝えしていきたいと思います。(文中の「スマホ」はスマートフォンのことです)
 
■子どもの顔を見て接する時間

スマホが普及してから、子どもとお散歩しながら、スマホを見ているお母さんをよく見かけます。
せっかく一緒に散歩して、同じものを見て、共感しあえる時間なのに、もったいないなーと思ってしまいます。

株式会社ボーネルンドの調査(2018年4月)によると、1歳から4歳の子どもを第1子にもつ母親の65.9%が子どもと遊ぶときにスマホを操作しながら遊んでいることがわかりました。
一方で、79.7%の母親が、スマホを見ながら子どもと遊ぶのは良くないと思うと回答しています。
また、97.3%の親が、子どもとの遊びを充実させることは重要であると答えており、85.9%の母親が、自分が子どもと向き合って遊ぶと、子どもの遊びに変化があると回答しています。

つまり、頭ではわかっているのにやってしまうんです。

LINEが来たら見てしまう
メールが来たら急ぎの内容かも?と思って見てしまう
子どもがひとりで遊んでいたら手持ち無沙汰でゲームを開いてしまう
なんとなくSNSを見てしまう
…などなど。

思い当たることもあるのではないでしょうか。

2021年10月に行われた、ある研究所によるスマホ依存についての調査によると、「かなり依存している」と回答した人が17.6%、やや依存していると答えた人が54.7%で、7割を超えるひとがスマホ依存を感じているという調査結果になりました。

■子どもへの影響

親がスマホを見ることが子どもにも影響を与えます。
ミシガン大学医学部の2018年の研究では、子どもが癇癪や落ち着きがないなど、親がストレスだと感じる行動を子どもがしたときに、親のスマホ利用時間は増え、親のスマホ利用時間経過に伴って、子どもの問題行動は悪化するという調査報告がなされています。

親子で一緒に過ごしている時に子どものことを見るのではなく、スマホを見るということは、子どもにとっては「自分よりスマホが大事なんだ」と感じることになります。
親が知らないうちに、親自身が大事な我が子を傷つけているのです。

スマホではなく、自分を見てもらうために、子どもの問題行動も増えます。

親に無条件に愛されているということを実感しながら、子どもは自己肯定感を育んでいきます。
スマホに負けるような愛され方では、子どもにとっては愛情が足りなくなります。

子どもが話をしている時に親がスマホを見ていたらどうでしょうか。
顔を見て話を聞いてもらえないと、本当に自分の話を聞いてくれているのか不安になります。
上の空の反応しか得られなければ、親と話をすることが楽しいことと感じられなくなり、だんだんと話をしなくなってしまうことも考えられます。

親とのコミュニケーションが希薄なものになると、社会性や共感性の発達が阻害され、情緒不安定の原因にもなります。

アメリカボストンの医療センターが行った研究では、親が食事中にスマホを使った家庭では、そうでない家庭と比べて食事中の会話が20%も少ないことが分かっています。

家庭内のコミュニケーションから、子どもが学ぶことは多いです。
コミュニケーションの基礎を家庭で身に着けるといっても過言ではありません。
安全な環境で安心して自分の意見を伝えることが出来る、その最たるものが家庭です。

親が子どもの顔を見ずに話を聞いていたら、子どもも友人の話や先生の話、社会に出てからは上司の話などを、スマホを見ながら、PCを見ながら、顔を見ずに聞くようになるかもしれません。

親の行動を見て子どもは育ちます。
今からでも親が行動を変えれば、子どもに与える影響も変わります。
思い当たることがあったら、いつからでも改善することができます。

スマホを見ていて、実は子どもを見ていない、そんな状況を「スマホネグレクト」と呼んだりもします。子どもを無視しているつもりも全くないし、スマホを見ているだけなので、虐待行為になっているということに気付かない親がほとんどです。


■共感することの大切さ
 
何度もお伝えしている通り、家庭でのコミュニケーションは、家庭外でのコミュニケーションの大切な基盤となります。
 
ですから、安心できる環境での「共感」を大切にしてほしいのです。
 
ここでいう「共感」とは、2つあります。
 
1つ目は、子どもの話を顔を見て聞き、「そういう気持ちだったんだね」「そう感じたんだね」等、思いに対して共感してください。どんな感情であっても、否定されずに共感してもらえるだけで、そういう感情を持った自分の存在を認めてもらえたという安心感を持つことが出来ます。
 
2つ目の「共感」は、同じことをして共感する、同じものを見て共感するということ。
同じ花を見て「綺麗だね」と共感する、同じ運動をして「疲れたけど気持ちよかったね」と共感する、かわいい動物に触れて「あったかいね」と共感する、そういうことを大切にして欲しいと思います。
 
これらの「共感」はスマホの画面を見ていては出来ないことです。
 
子どもと関われる時間は、長い人生の中のほんのわずかな時間です。
あっという間に大人になってしまいます。
過ぎた時間は取り戻せません。
子どもと関わる時間に、ちょっとだけスマホを置いてみませんか?
 
読んでいただいたひとから実践してもらい、お友達にも波及していくといいなって思います。
 
さて、今回は「子どもの顔を見て接する」について書かせていただきました。
冬休み、親子の時間が素敵な時間になりますように。