父親は、子育てを終えると学費など金銭的な面の心配から解放されるなどの理由でホッとする人が多いと思います。「定年まで気楽に働こう」「早期退職して都会から田舎にでも引っ越して自然を楽しもうか」などセカンドライフに向けて考え出す人も多いのではないでしょうか。

しかし、ホッとする反面で心にポッカリと穴が空いたような寂しい感覚に陥る人もいます。主に母親に発症することが多かった”空の巣症候群”という疾患が、近年父親でも発症することが多くなってきています。この疾患がどのようなものなものでどんな人が陥りやすいのか実際の体験談も交え、今回は父親目線で”空の巣症候群についてお話します。



目次

”空の巣症候群”とは
”かかりやすい父親”の特徴
”実際の体験談”とは
”好きなこと“を改善方法に

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”空の巣症候群”とは

空の巣症候群とは、別名エンプティネスト・シンドロームと称される心身ともに不安定な症状に陥る疾患です。分類的にはいわゆる心の病と言われています。女性のように日々常に子供と過ごせる時間が少ない父親にとって、子供の成長はあっという間に感じるものです。気がつけば進学や就職、結婚などで親から巣立っていきます。

”空の巣症候群”は、子育てを終えた中年〜初老の女性に多く現れる症状として多い疾患とされていましたが、近年では男性にも増えています。育児休暇を取得することが推奨される背景から以前より父親も子育てに参加する場面が増えていることも要因であると考えられています。

この“空の巣症候群“という疾患。燃え尽き症候群や五月病などと似たような症状といえば想像がつくかもしれません。子育てを終えてホッとする反面、自分の役割を終えたと感じて不安を覚える人もいるでしょう。一番身近な存在のはずの妻は、子育てを終えたことで趣味など自分の時間を有意義に使い始め、夫の症状に気づかないこともあります。

職場に行けば話し相手はいるもののプライベートな相談までできる同僚は少ない人も多く、結局誰にも相談できないまま悪化する場合もあります。本人も周りも気づかないまま重症になってから気づくことも多く、精神状態が不安定になると身体的にもダメージが出ます。

長年悩み続けるイカつきから口論になり、退職後に熟年離婚などをする夫婦が多くなってきているのも現状です。

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”かかりやすい父親”の特徴

子育てを終えた母親がかかりやすいと言われてきた空の巣症候群ですが、インターネット上で”空の巣症候群についての検索数”において、シングルマザー、父親、母親の順に多いという結果が出ています。

夫がいる母親よりも父親が検索している割合の方が多いということになります。かかりやすい父親の特徴の一つ目は「子供に全てを捧げてきた」と思っている人です。日頃は仕事のため、母親ほど子供との時間が持てない父親にとって”休みの日の過ごし方=子供との時間”と考える人も多いでしょう。

特にクラブや習い事などを始めると未経験の監督やコーチの仕事も引き受け、寝る間を惜しんでその知識をつけるために勉強したという父親も多いです。送迎で父親がバスを運転できた方が便利なため、大型バスの免許を取得したという熱心な父親もいます。

そんな父親ほど子供が手を離れた時に、心にポッカリ穴が空いたような寂しさに襲われます。二つ目は、夫婦仲があまり良くないという人です。夫婦仲が良い人に比べると子供が成長した時に感じる”寂しさ”が強いと言われています。

そのため、妻との関係より子供との関係は深くなりすぎる傾向にあります。いざ子供が巣立ってしまうとその時に感じる寂しさは、喪失感のような感情です。三つ目は、父子家庭の人です。離婚後は、父親が子供の親権を持ち育てるケースも増えてきています。

以前なら家政婦や実家に預けて働く父親の姿が多かったのですが、近年では父子家庭でなくても仕事をセーブして子供との時間を極力作るという父親が多い傾向にあります。父子家庭ともなれば、尚更”子供が生き甲斐”という父親が多くなるため、子育てが終わった後の喪失感は計り知れないものです。

もちろんこのような人全てが空の巣症候群にかかるというわけではありません。しかしこの時期は、他の疾患とは違い子供の年齢から逆算することであらかじめ予測できます。”自分はかかりやすいかもしれない”という性格や環境を自覚している人は、予防となる対策を早めに考えておくのも良いでしょう。

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”実際の体験談”とは

実際に”息子が少年野球をしていた”という父親の体験談をお話しします。平日は仕事で日曜に息子が通う少年野球に連れて行くことが、唯一”子育てをしている”と思う時間だったと言います。そんななか監督が急病でやめることになりました。

後任の監督を外部から迎えるかチームを解散するか話し合いの末、その父親が監督を引き受けることになりました。野球中継をテレビで見るし、ルールは知っているので少年野球の監督くらいできるだろうと軽く考えていました。

実際それほど甘くなく、今まで漠然と見ていたチームの子供たちの性格や癖を理解したり、アドバイスをするために野球について勉強しました。息子のためを思い、引き受けた監督。息子が卒業しクラブ活動を始めるとその送迎や応援もあったので少年野球の監督をやめることになりました。

クラブ活動でも頑張る息子の姿は仕事で大変なことがあっても吹っ飛ぶくらい励みになっていたそうです。大学進学や就職でも息子の相談に乗り、父子の関係は非常に良いもので成人してからは、毎晩一緒にお酒を飲み食事することが楽しみでした。そんな息子の結婚に父親は、涙を流し心から喜びました。

しかし、息子が家を出て改めて実感するとなんとも言えない喪失感を覚えたと言います。新婚の息子を食事には誘いにくく、ジムに行ったり趣味を見つけようとして苦労したそうです。加齢も重なり体調がすぐれない日が増えてきました。

息子の少年野球の頃のアルバムを見て涙が出ることもあり、友人に相談すると「また少年野球の監督でもしてみたら?」と言われたのでした。そして監督募集のチームを探し、また始めると忙しいながらも気持ちが楽になったと言います。

経験者であることが何より喜ばれ、やりがいを感じました。”息子ではない人生の楽しみ”を見つけたことで退職後も監督という趣味を楽しんでいると言います。

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”好きなこと”を改善方法に

具体的な改善方法としては、他の趣味を見つけること、ペットを飼うこと、子育てボランティアや保育士の補助などが挙げられます。しかし、体験談でお話した通り、ジムに通ってもピンと来なかったなど”趣味と言っても簡単に見つけられない”という人も多いと思います。

趣味というほどでなくてもまず”好きなこと”を紙に書いてみると何かヒントが思い浮かぶはずです。そして、身近な人に声を出して相談することも大切です。もちろん身近な人だからこそ相談できないという人もいると思います。今はインターネットや役所などでも無料相談窓口があり専門家に相談することもできるので活用すると良いでしょう。

今回は、父親目線で”空の巣症候群”についてお話ししました。息子が生き甲斐という熱心な父親、スポーツなど習い事をさせていた家庭で子育てを終えた父親が発症するケースも多いです。相談できる自治体など環境は整いつつあります。

しかし、本人が無自覚であることや身近な人がこの疾患に対して知識がないために、相談や改善に繋がりにくいのが現状です。この”空の巣症候群”という言葉を少しでも多くの人に知ってもらうことで苦しむ人の助けになることを願います。