プロスポーツメンタルコーチの増田良子です。隔月で「親」についてのコンテンツを配信せていただいています。

 今回は「夫婦関係」についてです。これから結婚する人も、まだまだ結婚の予定のない人も、ぜひご一読ください。よろしくお願いいたします。


                                                             

■夫婦は「他人」である

 結婚したことがある人にはよくわかると思うのですが(いや、結婚したことない人にもわかるかもしれませんが)、結婚とは他人同士が愛し合って結婚に至るものです。
どんなに好きでも他人ですから、ほとんどの場合が育ってきた環境も違うし、すべての考え方が同じって人は稀だと思います。
それでもお互いを知り、お互いの違いも認め合い、好きになって結婚するわけです。すごいことですよね。


 一緒に暮らしてみると、それまで知らなかった小さな違いが見えたりして、ぶつかることもあります。同棲してから結婚した人はその点は多少クリアになっているかもしれませんね。
 私の場合はまず、作ったカレーにいきなりソースかけられた瞬間に「は?」ってなりました(笑)「かけるとしてもまず一口は食べてからにしてくれ」と思いましたが、それもお互いの価値観の違いですよね。「目玉焼きに何をかけるか」が人それぞれ違うように、私の夫は「カレーにはソースをかける」という習慣があったんだと思います。でもそこは、味も見ないで最初からソースかけるなんて作った人に失礼だ、という私の意見を貫いた結果、いつの間にか夫からカレーにソースをかける習慣はなくなりました。
 私の例のように、ほんのちょっとの取るに足らない小さなことですが、こういう小さな価値観の違いをお互いに認め合ったり譲り合ったりしていかないと、夫婦関係は長く続きません。そして、ほんのちょっとのどうってことない習慣やそこから生まれる価値観が、親から子どもへ自然と引き継がれていきます。

■夫婦喧嘩について

 ある調査によると夫婦喧嘩を全くしない、という夫婦は10%程度です。数年に1度から週に1度まで頻度は違いますが、90%の夫婦が夫婦喧嘩を経験しています。数年に1度の人を除いても約70%の夫婦が多少の喧嘩をしています。毎日喧嘩をしている夫婦も10%程度います。喧嘩をするなとは言いませんが、子どもたちに与える影響をしっかりと認識することが必要です。

 夫婦喧嘩の原因は「家事」「子育て(教育方針)」「金銭関係」などが多いです。そして喧嘩のタイプには「暴力」「暴言」「無視」などがあります。



■夫婦喧嘩が子どもに与える影響



①脳への影響
 福井大学とハーバード大学で行った研究調査の結果、身体的暴力を見てきた人と、言葉の暴力に接してきた人とでは、言葉の暴力に接していた人たちの方が脳の萎縮率が6倍も高いことが分かりました。同研究では、日常的に夫婦の暴言に接すると、脳の海馬や偏桃体に異常をきたし、怒りや不安を感じやすくなる上に、視覚野の一部も委縮し、記憶力や学習能力も低下してしまうということが分かりました。視覚野の中でも「夢や単語を認識する部分」が身体的暴力を見てきた人よりも、言葉の暴力に接してきた人の方が3倍ものダメージを受けていたというのです。


②自己肯定感への影響
 そこまで頻度の高い喧嘩でない場合も、夫婦が言い争いをしている様子を見ている子どもは「自分がいるから悪いのではないか」と思ってしまいます。これは喧嘩の原因が子育てについてなら尚更ですが、そうでない場合であっても、子どもは自己中心的に物事を考える傾向があるため、「自分のせいだ」と思い込んでしまうのです。その状態が続くと自己肯定感の低いまま成長していくことになります。

 無視や冷戦状態の夫婦関係においては、子どもたちは「自分が何とかしなければ」と考え、両親の顔色をうかがったり、気付いた時には伝達役になってしまっていたりします。(伝達役とは例えば父親に「明日8時に家出るから母さんに言っといて」といわれて母親に伝えるなど、両親が直接話さずに子どもを介して話をするような状態のことです。)必死に両親の仲を取り持とうとしながらもうまくいかず、家庭の中が安心できる場所ではなくなってしまいます。そしてやはり「自分が悪いんだ」「自分なんかいなければよかったんだ」と自分のことを否定しながら育っていくことになってしまいます。
 また、よくあるのが親が子どもに相手についての悪口や文句を言ってしまうパターンです。子どもにとってはどちらも大切な親ですから、聞かされているのが苦痛になりますし、心に傷を負う子どもも多くいます。

③価値観への影響
 親が親同士で問題が生じたときに、罵声を浴びせたり、暴力で解決していく姿を見て育った子どもたちは、自分自身に問題が生じたときにも同じように解決すればいいと学んでしまいます。子どもは多くの言葉を親から教わります。毎日の生活の中でのちょっとした言葉遣いまでそっくりだったりします。それと全く同じように、問題解決の方法は喧嘩であると思い込んでしまうのです。正確に言うと、それ以外の解決方法を学ぶ機会を得られなかったといえるかもしれません。

 他にも結婚にネガティブなイメージを持つ傾向も見られます。結婚生活に幸せなイメージが持てずに育てば当然の話です。結婚することがすべてではありませんが、恋愛においても異性に対していいイメージが持てずにパートナーを見る目が十分に養うことができないまま成長していく可能性があります。
 また、本来安心できる場所であるはずの家庭が安心できる場所と感じられない子どもは、自分のことをもっと見てほしい、自分の存在を大切にしてほしいという思いから、万引きなどの犯罪に走るケースが見られます。


■子どもがのびのびと育つために

 夫婦喧嘩はない方がいいかもしれないけれど、どちらかがひたすら耐えている状態は良くありません。重要なのは「喧嘩」ではなく「話し合い」をする努力をお互いにすることです。話し合いで意見の食い違いを解決できることを子どもが家庭で学べたら、それは子どもたちにとってもメリットとなります。
 仮に子どもの前で喧嘩してしまったら、きちんと子どもにも謝り、喧嘩の原因が子ども自身ではないことや大切な存在であることを伝えてください。話がまだわからない小さい子どもに対しても「ごめんね、怖かったね」などと子どもの思いを受け止めしっかり抱きしめてあげてください。
 人を作り上げていくものの中に、学校や経験や友達など、たくさんの影響力を与えるものがありますが、一番大きいのが「親」といっても過言ではないと思います。
 「三つ子の魂百まで」と言われるように、人格形成は3歳までである程度決まるとも言われています。家庭が子どもたちにとって安全基地であることは、人格形成において大変重要なことなのです。
 夫婦の関係がよく、何でも言いたいことを言い合えて、笑顔がいっぱいの家庭においては、子どもも素直に思ったことを伝えられ、のびのびと育っていくことが出来ます。身の安全が保障され、つねに安定した情緒の中で成長していけると、子どもたちは自信をもって何事にも挑戦し、困難も乗り越えていけるようになるのです。

 さあ、これから夫婦喧嘩になりそうになったときは子どもたちの顔を見て、深呼吸して、踏みとどまってくださいね( *´艸`)



                    

増田良子(ますだりょうこ)

一般社団法人スポーツメンタルコーチ協会公認プロスポーツメンタルコーチ。

主に、アスリートの子どもを持つ保護者や、子育てに奮闘中のお母さんへのコーチングを行っています。「ママの心を軽くするランチ会」を月に1度開催。オンラインサロンspaceでもママ友会を開催しています。